マンションの大規模修繕工事は、数千万円から数億円規模に及ぶ、区分所有者の財産に直結する重要な事業です。しかし、そのプロセスの中で見過ごされがちなのが「利益相反」の問題です。
「利益相反」とは、ある人物が複数の立場にあり、その立場同士の利害が対立することを指します。
マンション管理の文脈では、関係者がその職務上の責任と、個人的な利害の間で板挟みになるような状況です。
たとえば、以下のようなケースが該当します。
これらはいずれも、区分所有者全体の利益を損なうリスクをはらんでいます。
中には、管理会社やマンション管理士の中で「利益相反があっても、きちんと工事が行われれば問題ない」と主張する人もいます。しかし、それは極めて注意が必要な考え方です。
重要なのは、「発注者側である管理組合が、利益相反の構造を正確に理解し、それを踏まえて判断しているかどうか」です。もし、そのような説明が一切ないままに業者や方式が選ばれているとすれば、それは透明性に欠け、適正な意思決定とは言えません。
利益相反の状態そのものが即違法とは限りませんが、説明責任を果たさずに進めることは、管理組合の自己決定権を侵害し、将来的なトラブルの温床になりかねません。
利益相反を軽視した対応が、以下のように法的責任に発展することもあります。
理事が関連会社に不適切に発注し損害が発生した場合、善管注意義務違反や忠実義務違反として、区分所有者から損害賠償を請求される可能性があります。
業者からの金銭的利益(キックバック)を受けて便宜を図った場合、背任罪や収賄罪に問われることもあります。また、管理会社や業者が共謀して談合を行った場合には独占禁止法違反や談合罪に該当します。
建築士や管理士が不適切な行為を行えば、業務停止や登録取消などの行政処分を受ける可能性もあります。
このように、利益相反を軽視することは、道義的な問題を超えて法的責任に直結する重大なリスクを含んでいます。
特に、「誰がどの業者とどのような関係性があるのか」を理事会で説明し、記録に残すことは、後々のトラブルを避けるうえで非常に重要です。
大規模修繕は、将来のマンションの価値と快適性を左右する重要な機会です。だからこそ、関係者一人ひとりが「これは利益相反にあたるのか?」という視点を持ち、慎重に判断していくことが求められます。
また、管理会社や専門家に任せきりにせず、「なぜこの会社なのか?」「この関係性に問題はないか?」と自ら問い直す姿勢が、よりよいマンション管理につながっていきます。
MTSでは、こうしたトラブルの未然防止や適正な運営の支援に取り組んでいます。疑問や不安があれば、どうぞお気軽にご相談ください。
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