商船三井興産の監督処分から学ぶ、管理組合のリスク回避ポイント
2025年9月9日、商船三井興産株式会社は、国土交通省近畿地方整備局から「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「適正化法」)」に基づく指示処分を受けたと公表しました。
管理組合の修繕積立金の着服および虚偽報告があったという、極めて重大な事案です。本稿では、この処分内容のポイントと、管理組合が日頃から注意すべき点を整理します。
商船三井興産は、管理受託していたマンションにおいて、元従業員が修繕積立金等を着服し、組合に損害を与えたことが判明しました。
さらに、月次の会計報告や年度の管理事務報告において虚偽の記載を行い、組合へ交付していたことも明らかになりました。
これらの行為は、適正化法第76条・第77条に定める帳簿・報告義務に違反するものとされ、再発防止策の実施や社内教育体制の整備等を内容とする指示処分が下されました。
同社は2026年10月9日までに報告書を提出し、さらに1年間、半年ごとに実施状況の報告が義務付けられています。
今回の問題は、単なる従業員の不正にとどまらず、管理会社の内部統制体制が機能していなかったことが根底にあります。
具体的には、以下のようなリスクが想定されます。
修繕積立金は金額が大きく、かつ動きが見えにくいため、着服や横領の標的になりやすい資金です。組合と管理会社との信頼関係だけでは、リスクは防ぎきれません。
今回の事案は例外ではありません。過去にも、管理会社による積立金等の不正管理は複数発生しています。
例えば、2020年には首都圏の管理会社が複数のマンションで修繕積立金を着服し、延べ約2億円の損害を与えたとして、国土交通省から業務停止命令を受けました。
このケースでも、担当者への業務集中と理事会側のチェック不足が共通しており、不正発覚までに数年を要しています。
(1)契約段階での備え
(2)日常的なチェック体制
(3)第三者・外部監査の活用
(4)不正発覚時の対応
管理会社と管理組合の関係は、信頼を基礎としつつも、それだけでは不十分です。
修繕積立金のような重要な財産については、「仕組み」による牽制と監視が欠かせません。
今回の処分は、管理会社にとっても大きな警鐘ですが、同時に管理組合側にとっても「対岸の火事」ではありません。契約・運営・監査の各段階で主体的に関与し、透明性の高い管理体制を整えることが、将来のトラブルを防ぐ最大の防衛策となります。
商船三井興産株式会社「国土交通省近畿地方整備局からの監督処分について」(2025年9月9日)
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