コラム

「“住民発”で発覚する欠陥――管理組合が自分で動かなければならない時代」

近年、築年数が経過したマンションで、住民・管理組合が主体となって構造や設備の不具合を発見し、対応を迫られるケースが増えてきています。かつては売主・施工会社が責任を持つ「アフター保証」「瑕疵担保責任」が中心でしたが、時間経過や保証制度の制限、法制度の時効などの影響で、管理組合自身が動かざるを得ない状況が顕在化しています。
以下、代表的な事例を紹介しながら、管理組合が先手を打つための視点や対応方針を整理します。

1. 事例から学ぶ「管理組合主導の発見・対応」

1. 兵庫県西宮市:ブランドマンション基礎部の構造不具合

  • 1985年竣工、分譲後40年超のブランドマンションで、最下階住戸の床と壁の接合部からの水漏れを発端に、住民側が床下点検を実施。
  • 調査の結果、排水管にコンクリート塊が詰まっていたほか、露筋、鉄筋切断、ジャンカ(コンクリート内部空洞)などの欠陥が 947カ所 にも上ると報告された。
  • 売主・施工会社は不具合を認めつつも、「構造耐力に影響はない」「法的責任は消滅時効により消滅」などと主張。道義的責任として補修をするとの回答を出している。
  • 管理組合側は不具合を「建築基準法違反」と指摘し、補修を求める動きを始めている。

このケースは、地上から見えにくい基礎構造部で、かつ傾斜地であったため目視で確認できたという特殊条件もあったが、それがなければ問題が表に出なかった可能性も高い。

参考記事:ブランドマンションの床下で多数の不具合 分譲40年、住民側が発見(朝日新聞:2025年10月16日)

2. 大規模修繕工事中に発覚した施工不良・瑕疵(ワースト5)

大規模修繕を契機に、次のような重大な不具合が発覚する例が報告されている(管理会社系情報より):

  • コンクリート打設不良
  • 鉄筋の配筋不良・かぶり厚不足
  • コア抜き(設けられた配管・配線用の穴あけで鉄筋を切断)
  • 構造スリットの未設置
  • 外壁タイルの浮き

着工後、足場がかかって詳細点検できる状態になると、当初の劣化診断では発見されなかった瑕疵が顕在化することが少なくない。こうして「追加補修が必要になる」「当初予算を大きく超える」事態に陥るケースもある。

3. タイル・構造スリット未施工を巡る紛争:建築紛争調停・訴訟への移行

あるマンションでは、大規模修繕に向けた調査で、当初設計図にあった構造スリットが未施工であったり、タイル浮きが広範囲に認められたりした事例がある。管理組合は売主に補修を求めたが、売主側は瑕疵担保責任期間の経過を主張し対応を拒否。
管理組合は住宅紛争審査会への調停を申し立て、さらに合意に至らないため訴訟に至ったという流れも見られる(いわゆる「不法行為責任」を追及する道)。
この事例は、設計図と実施工の整合性、調査・立証、交渉戦略、住民合意形成など、管理組合の役割と負担の大きさを象徴している。

4. なぜ管理組合が主体的に動かざるを得ないか:背景の整理

1. 保証・責任期間の限界

新築時の保証や瑕疵担保責任には期間制限があり、たとえば構造耐力上主要な部分・雨水浸入防止部分は10年保証が一般的であるが、築後何十年も経過すれば法的責任を問うのが難しくなる。民法上の損害賠償請求権は原則20年で時効となるが、社会的責任としての対応が重要である。

2. 制度・検査体制の不完全さ

完了検査や中間検査では、構造内部やコンクリート打設の品質までは目視で判断できず、専門的な欠陥を見抜けない。建築士や施工業者の監理機能が十分に働いていなければ、重大な欠陥も見逃される恐れがある。

3. 情報・資料の断片化

実施工記録や修繕履歴、設計変更履歴などが欠落している物件が多い。履歴が不明なまま次世代へ引き継がれ、欠陥が「見えないまま置かれる」ケースが発生する。

4. 組合・理事会の能力・資源制約

理事の多くは一般住民であり、専門知識を持つ理事が少ない。調査・交渉を外部専門家に委ねる資金が不足し、住民間の意見調整や合意形成が難しい場合もある。

管理組合が主体的に動くためのチェックポイントとステップ

以下は、管理組合が先手を打って対応を進めるうえでの確認ポイントと手順案です。

ステップ 内容 留意点・ヒント
初期兆候の早期把握 雨漏り、水漏れ、ひび割れ、タイル浮き、変形などの異常を見逃さない 居住者からの情報を集める仕組み(日報・連絡票等)を整備する
定期診断・劣化診断の実施 専門家(建築士、調査会社)による目視および非破壊検査で建物全体を把握 足場設置時、床下や基礎部の調査も含めるようにする
資料収集・履歴整理 設計図、施工図、増改築履歴、過去の修繕記録、各種検査報告書などを体系化 可能であれば電子化し、将来引き継げるように保存
原因・責任の切り分け 欠陥と経年劣化の判断、施工者責任か使用者責任かの切り分け 専門家による「原因報告書」「補修方式の妥当性判断」を得る
対応方針の決定と議論 補修内容/方法/費用負担の案を理事会・総会で承認 住民説明会を重ね、透明性を確保
売主・施工会社や第三者との交渉 補修の範囲、負担割合、実施スケジュールなどを協議 第三者検査報告書を根拠に交渉。説得力を高める
紛争処理・訴訟対応(必要時) 住宅紛争審査会、調停、訴訟等も視野に入れる 消滅時効、証拠保存、住民合意など、戦略的判断が重要
補修工事・再発防止 補修を実施し、その後のモニタリング計画を定める 補修後も点検を継続、再発がないかチェック

コラムで伝えたいメッセージ・注意喚起

  • 「大手ブランドだから安心」はもはや保証にならない
    実績やブランドがある企業でも、施工や品質管理には落ち度があり得る。住民・管理組合が自衛意識を持つことが重要。
  • 「見えない部分」は放置されやすい
    基礎、床下、梁・柱の内部などは目視できないため、異常が進行しやすい。定期的な専門診断は不可欠。
  • 早期発見・対応が被害拡大を防ぐ
    小さなひび割れ・漏水などの兆候を軽視せず、早めに調査を入れることが資金・信頼双方で有効。
  • 住民・組合の力を結集する/説明責任を果たす
    交渉や補修費用負担など、住民の理解と合意形成が成否を分ける。丁寧な説明と情報公開を心がけたい。
  • 未来の資産性を守るための「備え」
    築古マンション市場の拡大や住み替えニーズを考えると、構造や修繕履歴の透明化は資産価値にも直結する。

まとめ――「大手だから安心」はもう通用しない

この事件は、「大手ブランドマンションだから大丈夫」という思い込みを覆すものでした。完了検査制度や保証制度には限界があり、最終的に建物を守るのは管理組合自身の行動力です。欠陥を見抜く目を持ち、専門家と連携しながら、マンションの安全性と資産価値を次世代へつなぐ――それが、これからの管理組合の使命といえるでしょう。

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