コラム

設計コンサルに制度改革の波は来るか

~マンション修繕の透明性を支える「未来の仕組み」~

2025年春、マンション大規模修繕を巡る談合疑惑が30社超に拡大したという報道が世間を騒がせました。

マンション修繕工事談合、公取委約30社を検査 設計コンサルにも資料提供要請(日経クロステック2025.5.1)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/02399/

特に問題視されているのが、設計コンサルタントが発注者と施工業者の間で不透明な調整に関与していたという疑いです。

これは単なる一企業の不正ではなく、構造的な業界の慣習に対する警鐘といえます。ここで問われるべきは、単に不正の有無だけでなく、「なぜそれがまかり通ってきたのか」という制度と監督体制の問題です。

1. 設計コンサルを取り巻く制度の“空白”

現在、設計コンサルタントには特別な免許や登録制度は存在しておらず、誰でも名乗れてしまう現状があります。しかも、コンサルは管理組合に代わり、工事内容や金額、さらには施工会社の選定にまで実質的な影響力を持つ立場です。

つまり、“実質的な権限”を持ちながら、“法的な責任や規制”が極めてあいまいなのが、現状の制度設計なのです。

2. 制度化のシナリオ:今後あり得る「5つの方向性」

談合などの不正を未然に防ぎ、住民の資産を守るためには、コンサル業務に対する何らかの制度的アプローチが必要になると考えられます。下記に、今後の制度化の方向性を予測し、整理しました。今後も各所の検討が必要にはなっています。

制度的措置 概要 実現可能性 メリット 課題・懸念点
✅ 登録制 国交省等に届け出、業務履歴の公開 中~高 業界の見える化が進む 実効性はガイドライン次第
✅ 認定制度 民間団体による適正コンサル認定(任意) 自主的ガバナンス促進 利用者に周知される必要あり
❌ 許認可制 国・自治体による業務免許制 低~中 抜本的な信頼回復 業界・中小企業の反発が強い
✅ 行動規範・倫理規定の法制化 契約・選定行為に関するルール整備 不正行為への抑止効果 実施体制と監視機能の構築が必要
✅ 第三者監査の義務化 提案・選定プロセスの外部評価を義務づけ 公平性・透明性の担保 コストと人材確保が課題

3. 「選ばれるコンサル」への転換

今後、制度の有無にかかわらず、設計コンサルタントは “信頼される存在”から“選ばれる存在”へと変わっていく 必要があります。

それは単に専門性の高さだけではなく、倫理性・透明性・説明責任を含む総合的な「社会的信用力」が問われる時代です。

➤ これからの設計コンサルに求められる要素:

  • 利害関係の開示と回避
  • 明確な報酬体系の提示
  • 複数提案に基づく公平な業者比較
  • 中立性の証明(第三者立場)
  • 業務記録の適切な文書化と公開

4. 管理組合が先に変わるべきか、制度が先か

本質的な課題は、「管理組合が専門知識を持たず、選定プロセスを丸投げしてしまう」ことにもあります。管理組合は制度が整うのを待つだけでなく、今ある選択肢の中で透明性を確保する努力が必要です。

たとえば、MTSが推奨する 「プロポーザル+総合評価落札方式」 は、管理組合が複数の工事会社から提案を受け、明確な評価軸で比較・選定する仕組みです。これにより、選定過程に競争と説明責任が生まれ、不透明な調整余地は大幅に減少します。

5. 最後に:制度が育てる信頼のインフラ

マンションの修繕工事は、住民の生活と資産を守る基盤工事です。それを支える設計コンサルタントの業務に、公共性・中立性・倫理性が求められるのは当然の流れです。

私たちマンション適正管理サポートセンターは、今後も制度化の動きを注視しながら、管理組合と業界が健全な形で信頼関係を築ける仕組みの整備を支援してまいります。

制度が変わる前に、意識が変わる。仕組みが変わる。
そんな転換点に、いま私たちが立たされているのは確かです。

本件に関する詳細やご相談は、当センターのウェブサイト(https://www.mansion-support.jp
またはお電話(06-6630-0153)にて承っております。

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