コラム

マンション修繕工事における「談合違約金特約条項」導入のすすめ

――公正な工事発注に向けて、管理組合が備えるべき新たな一手

2025年6月26日、国土交通省はマンションの大規模修繕工事をめぐる談合疑惑を受け、「談合違約金特約条項」の導入を推奨する事務連絡を各関係団体宛てに発出しました。これは、公共工事において既に導入されている談合防止の手法を、民間のマンション修繕工事にも拡大適用すべきという強いメッセージです。

背景:マンション修繕に潜む「談合」のリスク

マンションの大規模修繕は、住民の多額の積立金をもとに実施される重要な工事です。しかしながら、入札参加企業間で価格調整などの不正な取決めが行われた場合、適正価格よりも高額な契約となり、管理組合や区分所有者の不利益となります。

実際に、複数の修繕工事案件で談合の疑いが浮上し、公正取引委員会が立ち入り検査に入ったことが報道されました。こうした状況を重く見た国土交通省は、公共工事で実績のある違約金条項の導入を、民間工事においても促進する意向を明確にしました。

談合違約金特約条項とは?

談合違約金特約条項とは、入札等で談合行為が確認された場合に、受注者に対して契約金額の一定割合(例:10%)を違約金として支払わせるというものです。さらに、違約金でカバーできない損害がある場合には、発注者が追加で損害賠償を請求することも可能です。

この条項は、違法行為の抑止力になるだけでなく、万一談合が行われた際の金銭的補填の手段としても有効です。国土交通省が示したモデル条項では、独占禁止法違反による課徴金命令の確定、刑事罰の確定などをトリガーとして違約金が発動します。

管理組合が取るべきアクション

マンション管理組合は、今後の修繕工事の請負契約に際し、弁護士など専門家の助言を得ながら、本条項の導入を検討すべきです。標準契約書の見直し、入札要項への明記など、実務的な対応も必要になります。

また、条項の導入は「工事の透明性を重視している管理組合である」という対外的メッセージにもなり、健全な業者の参加を促す効果も期待できます。

適正管理のための“備え”として

本条項は、談合を防ぐ「魔法の杖」ではありません。訴訟リスクや実効性の確保といった課題もあるため、慎重な導入と契約文面の精緻化が求められます。しかし、修繕工事の公正性と説明責任を果たすうえで、極めて有効な備えであることは間違いありません。

当センターとしても、今後、違約金特約条項の活用事例やモデル文書の提供など、管理組合の支援を継続してまいります。

マンション修繕工事に係る請負契約における談合違約金特約条項について(PDF)

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