コラム

建物の保全の義務から逃れられないマンション管理組合

管理組合は賠償請求対象 マンション漏水事故巡り初判断―最高裁

https://www.jiji.com/jc/article?k=2026012201090&g=soc

この記事にある通り、2026年1月22日の最高裁判決は、マンション管理の実務と法的責任のあり方を大きく変える画期的な初判断となっています。

この判決の背景、今後の展開、そして他のマンションへの影響について整理しました。

1. 背景の整理:なぜ今まで争われていたのか?

これまでは、マンションの共用部分(配管や外壁など)の欠陥で誰かが被害を受けた場合、「誰を訴えればいいのか?」という法的・実務的な高いハードルがありました。

  • 法律の原則(民法717条 工作物責任): 建物の欠陥で損害を与えた場合、まずは「占有者(事実上の支配者)」が、次に「所有者」が責任を負います。
  • 従来の壁:
    • 「管理組合」は建物の所有者ではありません(所有者は区分所有者全員)。
    • 「管理組合」が占有者に当たるかどうかも、下級審の判断は割れていました。「管理組合はただの団体で、物理的に支配しているわけではない」として、管理組合への請求を認めない判決(東京高裁など)も出ていました。
  • 被害者の苦悩: 管理組合を訴えられない場合、被害者は「区分所有者全員(例えば100世帯なら100人)」を被告として訴えなければならないという、現実的に不可能な手続きを強いられる恐れがありました。

今回の最高裁判決の意義:

最高裁は管理組合は共用部分を事実上支配・管理しており、占有者に当たる」と認めました。これにより、被害者は「管理組合という一つの団体」を訴えれば済む「ことが確定し、救済の道が大きく開かれました。

2. 今後の展開(本件訴訟について)

この判決で「管理組合を訴えても良い(被告適格がある)」ことは確定しましたが、「管理組合が賠償金を支払う義務があるか」の最終結論が出たわけではありません。

  • 高裁への差し戻し: 審理は高等裁判所(高裁)に差し戻されます。
  • 争点となるポイント: 今後は高裁で、以下の点が具体的に審理されます。
    • 本当に共用部分の欠陥(設置・保存の瑕疵)があったのか?
    • 管理組合に過失はあったか?(※ただし、所有者責任まで問われる場合は無過失責任となりますが、今回は占有者としての責任が焦点です)
    • 損害額はいくらが妥当か?

3. 他のマンションへの影響(ここが重要です)

この判決は、全国のすべての分譲マンションに直ちに影響を及ぼします。

対象 影響と対策
被害者(住民) 救済が迅速化します。 漏水被害に遭った際、区分所有者全員を探し出して訴える必要がなくなり、管理組合と直接交渉・訴訟が可能になります。
管理組合 責任が重大化します。 「我々は所有者ではない」という逃げ道がなくなりました。適切な維持管理を行っていないと、損害賠償責任を負う主体として厳しく問われます。
管理費・修繕費 コスト増の可能性があります。 管理組合が賠償リスクに備えるため、「個人賠償責任保険(包括契約)」の見直しや加入が必須となります。保険料の上昇や、配管等の点検頻度を上げるためのコストが管理費に跳ね返る可能性があります。

まとめ

今回の判決は、被害者救済の観点からは非常にポジティブなものですが、管理組合(=住民全体)にとっては「適切な保険加入」と「予防保全(メンテナンス)」の重要性がこれまで以上に高まったことを意味します。

ご自身のマンションの管理組合が、「施設賠償責任保険」や「個人賠償責任保険(包括特約)」に適切に加入しているか、補償額は十分かを確認するには良いタイミングであるのと、適切な修繕が行われ、建物の保全に関して、管理組合として責任が果たせているのかを考えてみる必要があります。

本件に関する詳細やご相談は、当センターのウェブサイト(https://www.mansion-support.jp
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一般社団法人マンション適正管理サポートセンター
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