公正取引委員会による排除措置命令の方針が報じられて以降、当マンション適正管理サポートセンターにも多くの管理組合様から「うちも該当業者かもしれない」「払いすぎた修繕積立金を取り戻せるのか」というご相談が寄せられています。
しかし、ニュースを見て感情的に業者へ抗議したり、いきなり裁判を起こそうとしたりするのは得策ではありません。なぜなら、談合を理由とした損害賠償請求には、非常に冷徹な「法律とコストの壁」があるからです。
今回は、現実的な実務の視点から、公取委の正式発表を前に管理組合が知っておくべき知識と、取るべき合理的な行動について解説します。
大規模修繕工事の談合問題において、損害賠償を請求する際の最大の難関は「本来の適正価格(いくら損をしたのか)の特定」にあります。
「報道で40%つり上げていたとあったから、うちも40%分を返せ」と主張しても、裁判や交渉では通用しません。建築費はマンションの形状、劣化度、施工時期(資材高騰の時期など)によって一邸一邸異なるため、「これが100%正しいベースライン(適正価格)である」と素人である管理組合が証明することは不可能です。
仮に裁判所で厳密に証明しようとすれば、裁判所が選定した設計士による高額な「鑑定」が必要となり、管理組合は数百万円規模の予納金(鑑定料)を先払いする覚悟を求められます。これでは、お金を取り戻すためにさらなる巨額のコストがかかるため、通常の弁護士であれば「費用倒れになるので裁判はお勧めしない」と答えるのが現実です。
この「金額の特定が極めて難しい」という問題を解決するために、実務上の交渉や裁判で使われるのが「民事訴訟法第248条」という法的な仕組みです。
【民事訴訟法第248条(損害額の認定)】
損害が生じたことは認められるが、その性質上、金額を証明することが極めて困難な場合、裁判所は、一切の事情(公取委の認定や、当時の一般的な物価など)を考慮して、相当な損害額を認定することができる。
過去の談合裁判のデータ(判例)を紐解くと、この条文をベースに「厳密な適正価格の証明が難しくても、公取委が摘発した談合事案であれば、総工事費の一定割合(一般的には4%〜10%程度)を損害額(過払い金)とみなして手打ちにする」という実務上の“型”が出来上がっています。
ここで誤解してはならないのが、弁護士の役割です。弁護士は、悪質な業者を法廷で完膚なきまでになぎ倒してくれる正義の味方ではありません。彼らは、「法的な手続きとコストを天秤にかけながら、事務的に最も傷の浅い『落としどころ(示談条件)』を探る冷徹な調整役」です。
本気で何年もかかる裁判をやれば、業者側も弁護士費用がかさみ、社外秘の原価構造を法廷で晒されるリスクを負います。
そのため、プロの弁護士は、公取委の処分内容や過去の判例を人質に取りながら、「お互いに泥沼の裁判をやるコストを考えたら、今ここで工事費の数%を解決金として返還して、事務的に手打ちにしませんか?」と、業者側にドライな損得勘定の取引(示談交渉)を持ちかけます。この「無駄なコストをかけずに実利をとる調整」こそが、弁護士の本当の手腕です。
数ヶ月以内に行われる公取委の正式発表(排除措置命令)を前に、管理組合が今やるべきことは、感情的に動くことではなく、弁護士が交渉しやすいように「事務的な下ごしらえ」をしておくことです。
業者が後から「お宅のマンションは談合の対象期間外(対象外)です」とはぐらかして逃げようとした際、交渉のフックとなる書類を集めておきます。契約書、見積書はもちろん、当時の理事会議事録、業者選定時の提案書、業者や管理会社と交わしたメールの履歴など、当時のやり取りがわかるものはすべて破棄せず保管してください。
当時の見積書を事前にプロの目で分解し、「数量の不自然な水増し」や「工種別の単価の異常値」がないか、客観的なデータを取っておきます。公取委の発表が出た瞬間に、「この不自然な数字が、まさに談合の形跡である」と弁護士が交渉のテーブルで突きつけられる武器を用意しておくためです。
前述の通り、この問題は「建築の数字」と「独占禁止法の実務」が絡む非常に特殊な分野です。一般的な弁護士では対応が難しく、消極的な態度を取られることも少なくありません。最初から「コストと実利のバランスを現実的に判断できる、建設・談合問題に明るい弁護士」に相談できるルートを探しておくことが重要です。
当マンション適正管理サポートセンターにおいて、弁護士の方に本件について、意見を伺っていたところ、相談したい管理組合があれば、紹介してもらってもいいということでしたので、「公取委の発表が出たらすぐに動けるようにしたい」「まずは今ある書類で勝算があるか見てほしい」という理事会・区分所有者の皆様、手遅れになる前に、ぜひ一度当センターまでご連絡をいただければ、弁護士をご紹介させていただきます。
本件に関する詳細やご相談は、当センターのウェブサイト(https://www.mansion-support.jp)
またはお電話(06-6630-0153)にて承っております。
一般社団法人マンション適正管理サポートセンター
お問い合わせ先: info@mansion-support.jp
TEL: 06-6630-0153