コラム

大規模修繕工事、資材不足で停滞!?中東情勢がもたらしたもの

2026年4月8日現在、マンション大規模修繕工事の現場では、「材料が仕入れられないことによる工事の停滞」が実際に発生しており、非常に深刻な状況にあるところが出てきました。

特に2026年初頭からの中東情勢の悪化(いわゆる「2026年建築資材ショック」や「ナフサショック」)が直撃しており、単なる値上げにとどまらず、供給停止や受注制限が相次いでいます。

大規模修繕工事の現場の現状レポート

現在の状況を整理すると以下の通りです。

1. 供給が特に滞っている主要材料

大規模修繕において致命的となっているのは、石油化学製品を原料とする材料です。

  • 防水材・塗料: 原料となるナフサの価格高騰と入庫見通しの不透明さから、一部メーカーが出荷制限や受注停止を行っています。屋上やバルコニーの防水ができないと足場を解体できず、全工程がストップするケースが出ています。
  • 配管類(塩ビ管・ポリエチレン管): 4月初旬に大手メーカーが大幅値上げとともに供給の不安定さを発表しており、設備更新を含む修繕工事に影響が出ています。
  • シーリング材: 外壁の目地埋めに使う材料も不足しており、外壁塗装が進まない要因となっています。

2. なぜ工事が止まっているのか

  • 「一つの欠品が全てを止める」構造: マンション修繕は「足場→洗浄→下地補修→防水・塗装→足場解体」という工程が厳密に組まれています。防水材や塗料が一点でも届かなければ、その後の足場解体ができず、結果として数ヶ月単位で工期が延びる現場が発生しています。
  • 工期が延びることで、既に確保していた職人(人件費)や足場のレンタル費用が膨らみ、当初の予算を大幅に超過して資金ショートに陥る管理組合も現れ始めています。

3. 現場での具体的なトラブル

  • 足場が取れない: 「防水工事が終わらないため、予定していた足場解体ができず、住民の生活(洗濯物が干せない、日当たりが悪い)への影響が長期化している」という苦情が増加しています。
  • 見積もりの無効化: 材料価格が数週間単位で変動(上昇)するため、施工会社が「見積時の価格では仕入れられない」として工事の一時中断や追加費用の請求を申し出る事例が頻発しています。

4. 今後の見通し

政府は備蓄の放出などで対応を検討していますが、中東情勢という外部要因に依存しているため、4月現在も「いつ正常化するか」の目処は立っていません。

アドバイス:
もし現在お住まいのマンションで工事が止まっている場合、それは施工会社の怠慢ではなく、業界全体の構造的な供給危機である可能性が高いです。管理組合としては、無理に工事を強行させて品質を落とすよりも、材料確保の目処が立つまで「足場を一部解体する」などの安全措置を含めた、柔軟な工期延長の協議が必要な時期にあります。

大規模修繕工事をこれから発注する管理組合はどうすべき?

2026年4月現在の「超・資材不安定期」に工事を強行するのは相応のリスクが伴うといえます。 しかし、雨漏りが深刻であるなど「待ったなし」の状況もあるかと思います。もし今、着工に踏み切るのであれば、後々の金銭トラブルや工事の中断を防ぐために、以下の5項目を必ず契約・確認してください。

1. 「材料確保の確定」をエビデンスで確認する

口約束の「大丈夫です」は通用しない時期です。

  • 在庫の先行確保: 契約直後に材料(特に防水材、塗料、シーリング材)を全量確保し、施工会社の倉庫やメーカーの引当済証明を出してもらえるか確認してください。
  • 特定メーカーへの依存回避: 万が一、指定メーカーの供給が止まった際、同等品(他メーカー)への切り替えを柔軟に行う「代替品承認プロセス」をあらかじめ決めておきましょう。

2. 「スライド条項(物価変動条項)」の精査

現在、見積書に「有効期限1週間」などの厳しい条件がつくのが一般的です。

  • 追加費用のルール化: 資材が急騰した場合、どの程度の変動まで施工会社が負担し、いくらから管理組合が負担するのか。この「境界線」を明確にしておかないと、工事中にいきなり「あと数千万円足りない」と言われるリスクがあります。
  • 予備費の計上: 当初の予算とは別に、資材高騰に備えた「物価変動予備費(5〜10%程度)」を資金計画に組み込んでおくことを強くお勧めします。

3. 「足場代」の延長料金に関する特約

材料が届かずに工事が止まった場合、最も痛いのは「足場のレンタル代」です。

  • 資材不足(社会情勢)による工事停止期間中、足場の延長費用を「誰が負担するのか」を明確にしてください。
  • 交渉のポイント: 「材料の未納は施工会社の責任ではないが、管理組合の責任でもない。よって延長費用は折半、もしくは実費のみとする」といった特約を検討すべきです。

4. 工程表の「バッファ(余裕)」の確認

従来のタイトなスケジュールは崩壊しています。

  • 余裕を持った工期: 通常より2割〜3割程度、長い工期で計画を立ててください。
  • 分割施工の検討: 一気に全棟に足場を組むのではなく、資材が入った分だけエリアを分けて施工・解体する「ローリング工法」などを検討し、住民が足場に囲まれる期間を最小限にする工夫が必要です。

5. 施工会社の「財務健全性」のチェック

今、最も恐ろしいのは工事途中の施工会社の倒産です。

  • 前払金の制限: 資材確保のために前払金(着工金)を求められることが増えていますが、払いすぎには注意してください。
  • 履行保証保険: 施工会社が倒産しても別の会社が引き継げる「履行保証保険」への加入は、現在の情勢下では必須と言えます。

結論:今判断すべきこと

もし「あと1年待てる」状態(致命的な漏水がない、タイルの剥落リスクが低い等)であれば、中東情勢や物流混乱が落ち着くのを待ってから着工する方が、コスト・精神衛生ともに遥かに安全です。

どうしても進める場合は、上記を盛り込んだ「2026年特別仕様の契約」が必要であるかと思われます。工事会社、管理会社、設計コンサルタント任せにせず、管理組合としての判断が問われています。

本件に関する詳細やご相談は、当センターのウェブサイト(https://www.mansion-support.jp
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