2026年6月12日の報道で、マンション大規模修繕工事を巡る談合問題に対して、公正取引委員会が「排除措置命令」を出す方針を固めたと報じられました。
「言葉は聞いたことがあるけれど、具体的にどんな処分なの?」「私たちのマンションにはどんな影響があるの?」と疑問に思われた区分所有者の方も多いのではないでしょうか。今回は、この「排除措置命令」の仕組みと、管理組合が知っておくべきポイントについて分かりやすく解説します。
「排除措置命令」とは、独占禁止法に違反した企業に対して、公正取引委員会が下す行政処分(法的命令)です。
ニュースでは「約16億円の課徴金(罰金のようなもの)」も同時に報じられていますが、課徴金が「金銭的なペナルティ」であるのに対し、排除措置命令は「企業の行動を強制的に正させる命令」です。「悪事を認め、関係者に謝罪し、二度とできない仕組みを社内に作りなさい」ということを、国が法律に基づいて強制します。
【具体例】排除措置命令で企業に強制されるアクション
対象となった企業(今回は設計監理会社2社、修繕工事会社約40社)には、たとえば以下のような非常に具体的で厳しい行動が義務付けられます。
【社内での正式な決議】
自社の取締役会などを開き、「過去に〇〇マンションの大規模修繕において、他社と裏で話し合って落札業者や価格を決めていた事実を認め、その関係を完全に断ち切る」と正式に決議させられます。
【被害に遭った管理組合への書面通知】
実際に談合の標的とされたマンションの管理組合に対して、「あなたのマンションの工事入札において、私たちが不当に価格をつり上げる談合を行っていました。現在は取りやめています」という事実を記載した書面を、直接送付させられます。
【全社員への教育とルールの厳格化】
「営業担当者が、他社の人間とカフェや電話で入札価格に関する情報交換をしてはならない」といった具体的な社内ルール(コンプライアンス指針)を新たに作らせ、全社員に定期的な法務研修を受けさせることが義務付けられます。
この命令が下ると、公正取引委員会のウェブサイトで「企業名」と「具体的な違反行為(手口)」が実名で公表されます。
マンション修繕業界において、実名が公表されることのダメージは計り知れません。信頼が第一の業界ですから、今後の受注活動に致命的な影響が出ます。さらに、これらの企業が公共工事(役所や学校の工事など)も請け負っていた場合、自治体などから「指名停止処分(一定期間、入札に参加できなくなる処分)」を受けるのが一般的であり、会社の経営基盤そのものが大きく揺らぐことになります。
最も気になるのは、現在大規模修繕を計画中、あるいは過去に工事を行った管理組合への影響です。
過去にその業者で工事をした、または現在契約中の場合
今回の命令が出たからといって、すでに完了した工事の契約が自動的に無効になったり、施工中の工事が突然ストップしたりすることは原則ありません。ただし、「相場より高く買わされていた(不当に修繕積立金を減らされた)」可能性が極めて高いと言えます。今後、管理組合として損害賠償請求などを検討する法的な根拠(証拠)になり得ます。
今まさに業者を選定中の場合
もし、候補の中に今回の対象企業(あるいはそのグループ会社)が含まれている場合は、選定プロセスを一時凍結するか、完全に候補から外して選び直すことを強くお勧めします。
排除措置命令は、いわば国が業界に対して突きつけた「イエローカード(退場一歩手前の警告)」です。
これにより、業界全体の談合体質に一定の抑止力が働くことは間違いありません。しかし、今回の摘発は「氷山の一角」に過ぎず、悪質なコンサルタントや業者は全国にまだまだ潜んでいます。
区分所有者の皆様の大切な資産(修繕積立金)を守るためには、行政の処分に期待するだけでなく、管理組合自身が「管理会社の推薦や特定のコンサルタントを盲信せず、常に第三者の客観的な視点(セカンドオピニオン)を入れる」という防衛策を取り続けることが重要です。
本件に関する詳細やご相談は、当センターのウェブサイト(https://www.mansion-support.jp)
またはお電話(06-6630-0153)にて承っております。
一般社団法人マンション適正管理サポートセンター
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